産業医に興味を持つまで
産業医とは
産業医の取得方法
産業医の現状
まとめ
産業医に興味を持つまで
臨床医として働く中で、患者さんの病気だけでなく、「働くことそのもの」によって健康を損なっている人に出会う機会が増えてきました。
過酷な労働環境の中で心身のバランスを崩し、精神科への通院を余儀なくされた同僚。外来に通いながらも、仕事を続けることが難しくなり、「このまま働き続けていいのか」と悩んでいる患者さん。そうした現実を目の当たりにする中で、これまで自分が行ってきた「治療する医療」だけでは限界があるのではないかと感じるようになりました。
病気になってから介入するのではなく、そもそも健康を損なわないようにすること。働く人が無理なく仕事を続けられる環境を整えること。そういった視点から医療に関わる役割として、「産業医」という存在に興味を持つようになりました。
産業医とは
産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言います。労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられています。
日本医師会 全国医師会産業医部回連絡協議会 https://www.sangyo-doctors.gr.jp/About(閲覧日:2026年4月17日)
産業医は労働安全衛生法に基づいて定められており、医師+αの要件を満たさないと産業医にはなることができません。具体的には以下の要件のいずれかが必要になります。
- 厚生労働省が指定する法人(日本医師会、産業医科大学)の研修修了者
- 産業医科大学などの産業医養成課程修了者
- 労働衛生コンサルト試験に合格した者
- 大学で労働衛生に関する教授、准教授、常勤講師の職にある者、あった者
具体的な産業医の仕事内容については様々ありますが、以下のようなものが挙げられます。
- 職場巡視(月に1回以上)
- 長時間労働者に対する面接指導
- 安全衛生委員会への参加
- 健康診断の実施と管理
- 休職/復職判定の助言
- メンタルヘルスの相談
産業医は一般臨床医のように病気・疾患を治療する医師ではありません。
産業医資格の取得方法
産業医資格の取得方法は様々ありますが、一般的には「産業医学基礎研修」の50単位を取得して申請する方が多いです。50単位は前期14単位以上、実地10単位以上、後期26単位以上の取得が必要です。この50単位の単位取得には①地道に単位取得、②50単位を数回の受講に分けて取得、③短期集中で一気に取得の3通りが大きく分けてあります。
以下の内容は可能な限り、令和8年度のものを記載しましたが、すでに募集が終了したものや、まだ新年度の情報が公開されていないものも、参考として利用してください。
地道に単位取得
全国の医師会主催の研修会に参加しながらコツコツと単位を詰め上げて行く方法です。日本医師会の研修検索ページから取得したい単位を見つけることは可能ですが、計画的に受講しないと単位がなかなか揃わず、取得までに時間がかかる点には注意が必要です。
50単位を数回の受講に分けて取得
週末や連休を利用してまとまった研修を複数回受講し、効率よく単位を取得する方法です。全国に以下のようなプログラムがあります。
・獨協医科大学産業医学講習会
開催地:ライトキューブ宇都宮
開催時期:令和8年8月8日〜9日
令和8年8月15日〜16日
令和8年9月22日〜23日
申込時期:令和8年4月12日〜(申込終了)
受講料:⚫︎獨協医科大学同窓会会員
8月8・9・15日、9月22・23日 17,000円/日
8月16日 18,000円/日
⚫︎会員以外の医師
8月8・9・15日、9月22・23日 22,000円/日
8月16日 23,000円/日
定員を超えた場合:先着順
・神栖市若手医師きらっせプロジェクト
開催地:アートホテル鹿島セントラル
開催時期:
(前期)令和8年8月1日〜2日
(後期・実地)①令和8年9月26~27日
②令和8年10月17〜18日
③令和8年11月7〜8日
④令和9年1月16~17日
申込時期:
(前期)令和8年6月29日〜
(後期・実地)①令和8年8月24日〜
②令和8年9月14日〜
③令和8年10月5日〜
④令和8年12月14日〜
受講料:(前期)46,200円 (後期)未定 7月中旬以降に発表
定員を超えた場合:(前期)先着順 (後期)未定 7月中旬以降に発表
・岡山大学産業医基礎研修会
開催地:岡山大学医学部 臨床第一講義室
開催時期:令和8年7月18日~20日
令和8年10月10日~12日
(※予備日:令和8年11月21日〜23日)
申込時期:令和8年3月24日~31日(申込終了)
受講料:132,000円
定員を超えた場合:抽選
・東京都医師会・帝京大学医師会産業医基礎研修会
(※令和8年度の情報は未公開 下記令和7年度の情報)
開催地:帝京大学板橋キャンパス 本部棟 2 階 臨床大講堂
開催時期:夏季、冬季に開催
(夏季)令和7年7月19日~21日
(冬季)令和8年1月10日〜11日,17〜18日
申込時期:(夏季)不明
(冬季)2025 年10月10日~15日
受講料:(夏季)不明
(冬季)帝京大学医師会員 4 日間 45,000 円
東京都医師会員 4 日間 65,000 円
道府県医師会員 4 日間 85,000 円
非会員 4 日間 89,000 円
定員を超えた場合:抽選
短期集中で一気に取得
6日程度の集中講座を受講し必要単位を一括で取得する方法です。最短で産業医取得できる点が大きなメリットですが、例年人気が高く抽選倍率が高いのがデメリットです。具体的に下記のようなプログラムがあります。
・産業医学基礎研修会集中講座
開催地:産業医科大学
開催時期:(第1クール)令和8年7月27日〜8月1日
(第2クール)令和8年8月3日〜8月8日
申込時期:令和8年4月1日〜4月7日(今年度募集終了)
受講料:160,000円
定員を超えた場合:抽選
・産業医科大学 産業医学基礎研修会 首都圏集中講座
(※令和8年度の情報は未公開 下記令和7年度の情報)
開催地:つくば国際会議場
開催時期:(第1クール)令和7年12月8日〜13日
(第2クール)令和8年2月16日〜21日
申込時期:(第1クール)令和7年9月1日〜8日
(第2クール)令和7年10月6日〜13日
受講料:日本医師会会員:160,000円
日本医師会非会員:200,000円
定員を超えた場合:抽選 産業医活動を1年以内にはじめる者優先
・東京都医師会・東京科学大学産業医研修会
開催地:東京科学大学医学部 講堂・講義室
開催時期:令和8年8月11日〜17日
申込時期:令和8年6月15日〜19日
受講料:東京科学大学医師会員 ¥30,000
上記医師会員以外で医科同窓会及び科学大学職員 ¥50,000
東京都医師会員 ¥70,000
道府県医師会員 ¥90,000
非医師会員 ¥110,000
定員を超えた場合:抽選
産業医の現状
近年、働き方を取り巻く環境は大きく変化しています。
臨床の現場でも、長時間労働や職場環境の影響で体調を崩す患者さんに出会うことは珍しくありません。特にメンタルヘルスの問題は年々増加しており、「仕事を続けたいが続けられない」という悩みを抱える方は確実に増えていると感じます。
こうした背景の中で、働き方改革関連法の施行により、企業にはこれまで以上に労働時間管理や健康管理が求められるようになりました。長時間労働者への面接指導やストレスチェックの実施など、産業医が関与すべき業務も年々増加しています。
また、労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の選任が義務付けられています。形式的に産業医を置くだけでなく、実際に機能する産業医の存在が強く求められる時代に変化しています。
一方で、供給側にも課題があります。日本医師会の調査では、認定産業医は10万人以上存在するとされる一方で、実際に産業医として活動している医師は約半数にとどまると報告されています。つまり、「資格はあるが十分に活用されていない」というミスマッチが生じているのが現状です。
こうした状況を踏まえると、今後求められるのは単に資格を持つ産業医ではなく、現場で実際に機能し、企業や労働者に対して具体的な価値を提供できる産業医であると感じています。
産業医という役割は、単なる“選任義務”を満たす存在から、“企業の健康経営を支える専門職”へと変化しつつあります。その中で、自分自身がどのように関わっていくのかを考えていくことが重要だと考えています。
まとめ
産業医は、臨床とは異なるフィールドで医師としての専門性を発揮できる働き方の一つです。資格取得自体は比較的ハードルが低い一方で、「取得後にどのように活かすか」が重要になります。働き方改革やメンタルヘルス問題の増加により、産業医の役割は今後ますます重要になると考えられます。私自身も取得を目指す中で、単なる資格取得にとどまらず、実際に現場で価値を提供できる産業医を目指していきたいと思います。

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